ラ・リーガ 第16節 A・マドリードvsセビージャ 【レビュー】

アトレティコ・マドリード

 2024年12月9日、A・マドリードvsセビージャの試合がA・マドリードのホームにて行われ、4-3でA・マドリードの劇的な逆転勝利となった。この結果、A・マドリードは勝点35となり公式戦9連勝でリーグ戦は5連勝。首位のバルセロナと勝点3、2位のR・マドリードと勝点1差となった。この試合、逆転勝利をしたことは喜ばしかったが、セビージャに敗戦してもおかしくなかった試合展開であり、何が原因であったか考えてみる。

フォーメーション

 A・マドリードは4-4-2、セビージャは4-3-3の初期配置。
 A・マドリードは前節からメンバー変更なし。攻撃力抜群であった前節のメンバーをそのまま使ってきたことによりこの試合も複数得点が期待できる。

前半崩せなかったセビージャの守備

 前半10分にPAエリア前でボールを奪い、幸先よくデ・パウルのゴールにより先制に成功したA・マドリード。しかし、すぐさま12分にショートコーナーからセビージャのルケバキオに同点ゴールを決められると、前がかりになったA・マドリードに対し、32分にカウンターからロメロにゴールを決められ逆転を許す展開となった。

 前半の展開で褒めるべきはセビージャの4-4-2ブロックだろう。A・マドリードは、前節でみせた中央に人を集める「中盤のオーバーロード」を採用したがうまく機能ができていなかった。
 

 セビージャの守備は、まず2トップがA・マドリードのアンカーであるバリオスにボールが渡らないように、2トップ間の距離を狭めてCBからバリオスにパスを通さないようにする。そして、両BOに関しては4-4-2ブロックの危険エリアであるバイタルエリアにポジショニングする相手に対し、CBから直接パスが通らないようにパスコースを消しながら守備を行っていた。
 また、CBに関してもバイタルエリアにポジショニングするA・マドリードの選手に対して素早くプレスを行っていたことや、中盤で自由にポジショニングチェンジを行うA・マドリードの選手のマークの受け渡しがスムーズに行えていたことも強固な守備を築けていた要因であった。

綻びが出たセビージャの守備

 後半が始まり、57分にセビージャがA・マドリードを突き放す。右サイドでボールを受けたルケバキオが左SBガランをかわし中央へドリブル。そのまま、左サイドへボールが渡りピケのクロスに大外からベラスコが飛び込みゴール。
 このシーン、個人的には左SBガランの対応があまり良くなかったように見える。まず、足元の技術が高いルケバキオがボールを受けた際に、ガランは後向きから前向きに姿勢を整えた時であったため、ルケバキオからワンタッチで簡単に抜かれてしまっていた。そして、その後のクロス対応にしてもガランの背後にいたべラスコに対して意識できておらず、ベラスコのマークがフリーとなりゴールを決められてしまった。

 2点差をつけたセビージャであったが、ここから守備に綻びが出始める。
 62分のグリーズマンのゴールに関しては、まず前述した2トップのアンカーへのパスコースを消す動きがみられず、あっさりバリオスがボールを受けて前向きになってしまっていた。そして、バリオスからグリーズマンにアシストのパスが出されるが、この時、左SBが中央へポジショニングをすることができていなかった。
 しかし、グリーズマンのポジショニングも褒めるべきであろう。バリオスにボールが渡る前はオフサイドラインより前にいたグリーズマンであったが、バリオスにボールが渡る際にはオフサイドラインよりも後ろにポジショニングし直し、そして、セビージャの左CBと左SBの中間の位置にいたことで守備のマークを曖昧にしていた。
 この、①2トップの制限ができていなかった、②セビージャ左SBのポジショニング不良、③グリーズマンの絶妙なポジショニングが合わさったことでの1点であった。

 サムエウ・リノのスーパーミドルの同点シーンでは、押し込まれたセビージャが一時的に後ろが7人並んでおり、ブロックの’’扁平化’’が生じていた。横一列でブロックを作ると、必ず前方に広大なスペースができてしまう。そこに、サムエウ・リノがポジショニングし、プレスを行っても狙いを定める十分な時間ができているため、スーパーミドルが炸裂することになった。
 ブロックの扁平化が起きた原因として、セビージャのアンカーであるアグメがCBの間に入ってしまっていたことだろう。サムエウ・リノがボールを受けたスペースは、本来アグメがいるべき位置であったため、アグメが普段通りポジショニングにしていれば生まれなかった得点であるといえる。

 敵地で勝ち点を持って帰りたいセビージャは5-4-1の守備的なフォーメーションへ変更。しかし、これにより、より一層A・マドリードがボールを保持する時間が長くなることになり、サムエウ・リノのクロスからグリーズマンが逆転ゴールを決めて、劇的な逆転勝利を収めることになった。

総括

 サッカーでは’’2点差から逆転しやすい’’という言葉がある。
 これは、心理上2点差は余裕があるのだが、時にそれは油断が生じることになる。1点差に追いつかれると「あと1点取られたら同点にされる。。。」と考える選手が出てくるはずだ。この試合でも、セビージャのアグメが後ろに下がってCBの間に入ってしまったのは、そのような心理状態であったかもしれない。
 そして、同点に追いつかれると「逆転されてしまう」もしくは「1点取り返さなければならない」と選手それぞれが統一した考えにならず、自ずとポジショニングにも影響がでてくる。1-3のスコアまではセビージャのペースであったが、逆にそれがセビージャの素晴らしい守備ブロックの綻びを生じるきっかけになったのではないどろうか。

 自滅してしてしまったようなセビージャであるが、A・マドリードの中盤のオーバーロードは継続していくべきであろう。中盤の人数を多くして相手のマークを攪乱しやすくなるのは効果的であり、結果的に、この試合は4点取っており、前節と合わせると2試合で9得点していることになる。後半に出場したスルロットに得点はなかったが、決定機が3回もあり次の試合でも期待したい。
 また、この試合のMOMはグリーズマンだろう。逆転ゴールもあるが、1.5列目に下がったり、時にはBOの位置までボールの配給役に回ったりと広範囲でプレーしてくれるのは素晴らしく、現在のA・マドリードには欠かせない選手だ。フル稼働してもらいたいが、リーグ終盤で疲労が蓄積してこないかが懸念されるため、アルバレスやスルロットの一層の活躍に期待したい。

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