ラ・リーガ 第18節 A・マドリードvs バルセロナ【レビュー】

アトレティコ・マドリード

 2024年12月22日、注目される首位攻防戦であるA・マドリードvsバルセロナの試合がバルセロナのホームにて行われ、2-1でA・マドリードの逆転勝利となった。この結果、A・マドリードは勝点41となり公式戦11連勝でリーグ戦は7連勝、暫定であるがラリーガでついに首位に躍り出た。勢いに乗るA・マドリードか、首位を明け渡したくない名門バルセロナの一戦は、サッカーファンなら注目の試合であったに違いない。試合内容としては、バルセロナが勝利してもおかしくなかった内容であり、どこがA・マドリードの勝利の分岐点であったのか戦術的にみていく。

フォーメーション

 A・マドリードは4-4-2、バルセロナは4-3-3の初期配置。
 A・マドリードは、前節より左SHサムエウ・リノからギャラガーに変更し、今シーズン最も複数得点を記録してきた布陣で挑んだ。

流石の4バック攻略

 試合展開は、予想通りバルセロナがボールを保持しA・マドリードの4-4-2ブロックを攻略する展開となる。バルセロナのビルドアップ時は、IHペドリとガビにデパウルとバリオスがマンツーマン気味にポジショニングする。しかし、デパウルはACカサドがボールを持った際に背中でペドリへのパスコースを消すようにポジショニングするのだが、ペドリがポジショニングし直すことでパスコースが空きバイタルエリアに侵入されるため、前半ではペドリがいる右サイドから崩されることが多くピンチを招きやすかった。
 また、バルセロナの左サイドでの攻撃は一部デザイン化されている動きがみられた。
 

 ペドリがオフザボールで相手のSB・CB間にフリーランニングしてハーフスペースを空けて、空いたスペースにレヴァンドフスキやフィルミーノが入ることで、チャンスを作っていた。
 得点シーンのおいても、ペドリはフリーランニングすることでデパウルのマークを外し、自分をフリーの状態にすることでドリブルからゴールへ導くことができた。

発動できない「中盤オーバーロード」

 この試合のA・マドリードのスタメンは、今節まで複数得点を記録してきた攻撃的なメンバー構成であり、「中盤オーバーロード」により後方からの前進している時から中央に人数をかけて攻めに行くスタイルであるが、この試合に関してはこの「中盤オーバーロード」が発動できないでいた。これは、A・マドリードの問題というよりバルセロナの①ハイライン、②ネガティブ・トランジション(ネガトラ)での切り替えの速さの影響が大きかった。
 A・マドリードが後方でボールを持ち、ビルドアップからミドルサードへ前進を図る際に、バルセロナは最終ラインをハーフウェーラインに揃えており非常に高い位置で設定している。それにより、バルセロナのライン間のスペースがかなり狭くなっていることで、ライン間でボールを受けてもすぐに囲まれてボールを奪われてしまう。そのため、多くのチームはディフェンス裏の大きくできたスペースへロングパスをすることになるのだが、CB含めたDF陣の足が速いため、振り切ることがなかなかできない。
 また、ボールを奪った後に自分たちのペースでボールを回したり、素早くカウンターを行いたいところだがバルセロナのネガトラの切り替えが速いことで即時ボールを奪取されやすいことも「中盤オーバーロード」が発動できなかった要因であった。

カウンターで沈められたバルセロナ

 後半に入るとA・マドリードは、左SHギャラガーとBOデパウルのポジションをチェンジ。ビルドアップ時に左SHのデパウルがハーフスペースに位置することで、バルセロナのアークを曖昧にしてプレスを緩めさせたことで、後方にボールがあるときに回しやすくなりある程度ボールを保持しやすくなった。
 そして、66分マルコス・ジョレンテが最終ラインに入って5バックを形成し、73分にルノルマン、スルロットを投入し5-3-2のフォーメーションにすることで、バイタルへリアを3CBで対応しやすいようにすることで守備を安定させたのに加え、前線のスルロットの前線でのボール収めとボールの決定力を信じた。

 バルセロナのハイラインは、相手のビルドアップ・前進をことごとく潰すことができ、苦し紛れのロングパスも正しい処理により回収することができる。しかし、ハイラインでのカウンター対応では、ブロックをセットできればいいのだが、戻りながらのボール処理は難しく後方のGKへ戻すか側方にクリアしかない。そのため、デパウルの同点弾においても戻りながらのボール処理が難しく、中途半端なボール処理となり失点することになった。
 また、スルロットによるATの逆転弾では、右のハーフスペースでボールを持ったフィルミーノがゴール前へクロスをするのを見越して、左SBバルデが前線に走りこんでいたが、フィルミーノはショートパスを選択。しかし、パスがカットされカウンターを受けると がら空きの左サイドへボールを供給され、最後はグランダーのクロスをスルロットが流し込む形となった。

総括

 A・マドリードは、今シーズンにおいてギャラガーやアルバレスを補強することで格下相手でも自チームがボールを保持する際に戦うことができ勝ち点を積み重ねてきた。高強度の守備を行ってくる相手にはボール保持がままならないが、お得意のカウンターにより勝利を掴むことができ、この2面性が今シーズンのいいところであるだろう。(欲を言えば、CLに出場する相手にもボール保持して試合を支配してほしいが)
 バルセロナに関しては、ハイラインであるが故の戻りながらの守備に課題があると考える。ネガトラによりカウンターを阻止できるところがあるが、その強度を後半までもたせることが難しいのかもしれない。おそらく、ゲームプランとしては前半や後半の始めまでに複数得点をとって試合を決定させることが1番いいのだろうが、後半までもつれると守備に綻びがでてしまい、引き分けに終わるか逆転されてしまうということが、ここ数試合でみられている現象なのではないかと考える。

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