2024年12月1日にPEACE STADIUM Connected by SoftBankにて長崎vs仙台のJ1昇格プレーオフ準々決勝が行われ、1-4で長崎が仙台に屈し悲願のJ1昇格に届かなかった。長崎にとって引き分けでも次の決勝に進める優位な状況であったにも関わらず、この完敗には正直驚いた。なぜ、このような敗戦となってしまったのか、この試合何が起こっていたのか自分なりに考察し、少し来シーズンの展望も考えてみたいと思う。
フォーメーション
長崎は4-3-3、仙台は4-4-2のフォーメーション。
仙台にメンバー変更はなかったが、長崎はCFにエジガルジュニオが復帰し、これまでCFの位置にいたマテウスが従来のIHとなり、名倉がベンチスタートとなった。
停滞したビルドアップ
前半は長崎がボール保持する時間帯が多く、逆に仙台はブロックを固めて守備に回る時間帯であった。
長崎は、仙台の2トップに対して2CB+アンカーの秋野、もしくは、GK+2CBの3枚で数的優位を作ってビルドアップを行いやすいようにしていた。また、秋野が後方3枚に入った時はアンカーの位置に安部が入るようにして、後方と前線をつなぐ役割を行っていた。
それに対して、仙台は2トップ+左SHの3枚でプレスを行い、数的同数を作ろうとしていたが、そうなると長崎の右SB増山がフリーになりやすいため、長崎の攻撃は左サイドよりも右サイドで攻撃することが多かった。
しかし、長崎のボール保持率が高かったということが、決して優位であったとは言い切れない。この試合を見ていた人たちが思ったことがあったはずだ。
「長崎は後ろでボールを持っている時間が長い」
この試合、長崎は攻撃に攻めあぐねており、後方でボールを持っていても前線にパスが通せなかったのだ。長崎はリズミカルに後方からのビルドアップができず、度々CBからエジガルやマテウスに対しての単調なロングパスがみられていた。
では、なぜ前線に効果的なパスが通せなかったのか。大きな要因は、仙台の守備にある。
徹底した仙台の守備
上図の赤いスペースをみてほしい。私の私見であるが、4-4-2ブロックのこのスペースにボールが渡った際、チャンスが生まれやすい。実際、この試合の14:55あたりの仙台の攻撃でも同様にチャンスが生まれている。いわゆる、バイタルエリアと呼ばれものであるが、長崎はこのスペースへパスをほとんど出せていなかった。いや、仙台がスペースへ出させなかったというべきだろう。
上図の青いスペースは、赤いスペースへパスを出すための1つのスペースとなるのだが、仙台はこのスペースで長崎の選手が自由にならないようにプレスを強めていたため、長崎の攻撃にチャンスが生まれにくかった。
また、仙台がこれを徹底していたことが大きかったが、長崎の選手で後方と前線を繋ぐリンクマンがいなかったことも要因だった。エジガルやマテウスのような得点力のある選手が後方に下がるわけにはいかず、ビルドアップから停滞する要因になったはずだ。そのため、長崎は強力な外国人選手がいるのにも関わらず、その外国人選手にボールが渡らないようにしていたのが仙台が対抗してきた戦術であった。
総括と来シーズンに関して
プレーオフを勝ち上がれず来シーズンもJ2で戦うことになったが、この試合を見ると今シーズンの問題がそのまま投影された試合となっていた。
1.効果的なビルドアップが行えなかった
2.不十分なプレス
①に関しては、まさにこの試合で露呈した問題点である。長崎は終盤5連勝にてフィニッシュしたが、ショートカウンターにてゴールする機会が多く、逆に後方から繋いで崩すことがなかった。特に、5バックで守ってくるチームに対しては苦戦することになっていた。
②長崎は4-4-2にて守備を行うが、相手のビルドアップをこちらから制限するような守備を行っていなかった。守備は必ず受け身となるが、全部を相手に合わせる必要はない。この試合の仙台の守備はお手本となるような守備に見えた。2トップの一角はプレスに行き、もう1人がアンカーを消すようにすることで自ずと相手のプレスを外回しに誘導していた点は参考にすべきだろう。そして、危険なスペースを選手が共有しておき、そこにプレスを強めることもできる。
来シーズンの編成次第であるが、下平監督のままであれば上記の2つはさらにグレードアップしてくれるはずだ。特に、私個人としては前から仕掛けるようなプレスを行ってくれることに期待したい。夏にこの守備に関して着手したということであるため、来シーズンのV・ファーレン長崎は、さらに自分たちがゲームを支配するようなチームとなることに期待している。
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